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harutanaoki's blog

シンガポール在住 春田直樹の日記

「終わらないエンドレス」 ~ Oh, what a night ~

昨夜は同僚のフィリピン人女性の自宅誕生日パーティーに招かれまして、

少しだけ顔を出して参りました。

お部屋に入りますと、主催者以外は全員フィリピン人男性という状態であり、

中々のアウェイ感に飲み込まれそうになりましたが、

蓋を空けてみれば実にほのぼのとした、親戚の集まりのような和やかな雰囲気でありました。

ただ、テキーラを順番に一気で飲み続ける点(終わらない)、

一人の男性が自宅用カラオケセットで延々と歌い続けている点(終わらない)など、

数点の“終わらない”カルチャーには戸惑いを隠し切れませんでした。

 

私としては、「今夜はまさに“Oh,what a night!(オーワラナイッ)"ってヤツだね!」

と日本人にしか理解されないであろうギャグを、喉もとで必死に食い止めておりました。

そしてテキーラ数杯を空けて私の意識が朦朧とし始めた頃、

ふいにライオネル・リッチーとダイアナ・ロスによる懐かしの名曲が耳元に流れ込んできました。

そう、彼はマイクを“エンドレスにグラブ(握り)”しつつ、こともあろうか“エンドレス・ラブ”を

熱唱し始めたのです。

この時点で室内のエンドレス感は最高潮に達しています。

 

Endless Love - Diana Ross & Lionel Richie - YouTube

 

「無事に帰れないかも知れない・・」という身の危険を感じた臆病者の私は、

高まり続けるエンドレス感を振り切りつつ、早々と部屋を後にしました。

 

短時間でハードリカーを数杯飲み干したため、自宅の方角どころか、

どうやってここまで来たのかも思い出せなくなり、しばらくバス停のベンチで休むことにしました。

そうでもしないと、延々とバスを乗り継ぐも一向に自宅に辿り着かないという

これまたエンドレスな事態に陥りかねないと考えたからです。

タクシーを拾おうと何度も手を上げました。

しかしエンドレスの呪縛なのか、延々と車は流れ続け、いつまで経っても止まる素振りを見せません。

 「Oh..,what a night....(なんて夜だ)」と一人呟きつつも、冷静さを取り戻すべく夜風に当たっておりました。

すると腕のあたりにモゾモゾと、こそばゆいような違和感を憶えました。

 

ふと目をやると、小さな生き物が這っています。

「ぬらあぁぁ」と意味不明な言葉を発しながら振りほどき、

足元に落ちた生き物をマジマジと観察してみました。

2センチにも満たない、トカゲの赤ちゃんです。

特に爬虫類が苦手というわけでもないのですが、突然体に張り付いていると驚いてしまうものです。

ちなみにシンガポールでは、大小問わず頻繁にトカゲを見かけます。

大雨の後などは、1メートルほどの巨大なトカゲが目の前をノソノソと歩いていたりするのです。

 

きっとこの小さなトカゲも、私がじーっとバス停のベンチに座っているものですから、

足を木の根元と勘違いし、腕を枝と勘違いしたのでしょう。

確かに形状が似ていると言えば似ています。

トカゲの方からすれば、良い所に木を見つけたと思ってよじ登った途端、

「ぬらあぁぁ」と音を立てて激しく揺れ動いたのですから、さぞかし驚いたことでしょう。

もしかしたら負傷したかも知れません。

 

しかしあくまで私は木ではありません。

何事も無かったかのようにヒョコヒョコと地面を歩く小さなトカゲ。

「ジーンズは履いてるし、シャツも着ているというのに、なんで樹木と間違えるかね・・。」

野生動物にあるまじきその危機管理能力の低さ、観察眼の鈍さにイラつきすら感じておりました。

酔いに任せてしばらくそんなことを巡らせている内に、いくぶん頭もスッキリし、

「さて、どのバスに乗ればよいのやら」ということも考えられるようになりました。

携帯で調べてみると、あと3分で目当てのバスは到着するとのこと。

 

 「これでなんとか、エンドレス地獄からもオサラバできるわけだ・・・」

と一息付いたその時、今度は耳の辺りにモゾモゾと、こそばゆいような違和感を憶えました。

「ぬらああぁぁぁぁ」とまたもや謎の言葉を発しつつ、その生き物を払い飛ばしました。

足元に落ちたその生き物をマジマジと見つめてみますと、驚いたことに、先ほどの小さなトカゲであります。

 

まだ分かっていないのであります・・・。

あの後携帯を取り出してピコピコいじるわ、両手を広げてノビをするわ、

“これは人間であって樹木ではないよ”というヒントを散々与えてきたにも関わらず、

全くもって理解していないのであります。

なんなら先ほどより高いところまで登ってきておるのです。

 

「ここに居る限り、エンドレスに登られ続けるかも知れない・・・。」

バス停に充満し始めたエンドレス感から逃げるようにバスに乗り込み、

なんとか無事にその日を終えることができました・・・・。

 

実はこの後、私の前を歩きながらエンドレスにオナラをこき続けるオジサンにも遭遇したのですが、

細かく描写すると気分を害する方が出てくると思われますので、省略致します。

ただそのオジサンがひとしきりコトを終えた後、チラリと後方を確認した時には

思わず「オーワラナイ!!」と叫びそうになりました。

終わった後の後方確認にどんな意味があるのかと、しばらく問い詰めてみたいものです。

 

 

さてこのように、「終わりが見えない」という状態はかくも人間を恐怖に陥れるものです。

仕事が終わらない、鼻水が止まらない、将来への不安が消えないなど、

人それぞれに様々なエンドレス感に悩まされていたりするものです。

ただ私などが言うまでも無く、本当に終わらないことなどこの世の中には無いのです。

そんなエンドレス感に悩まされた時には、この曲を思い出すなどして少しでも気を楽にしてみるのは

どうでしょうか。 


kool and the gang ladies night - YouTube

 

クール&ザ・ギャングの名曲“レディーズ・ナイト”。

まず司会者のバンド紹介の後、イントロが始まって数秒で「オーワラナーイ」と宣言し、

観客を不安のドン底に叩き落とします。

しかし、その直後に入るキレの良いベースラインを聴いたが最後、うねるグルーヴが腰を直撃し、

その絶妙な展開に、気付けばズルズルとディスコ地獄の快楽に溺れてしまいます。

また映像の途中で、今は亡きあの“キング・オブ・ポップ”が楽しそうにリズムを取っている姿が映るという、

その手のファンにとってもたまらない内容となっております。

ちなみにこの曲、「オーワラナーイ」と宣言し続けた後、約4分で終了致します。

しかも生演奏ではありません。儚くも自動的に終わるのです。

何とも皮肉が利いております・・・。

 

明日からもまた、幾多のエンドレス感が待ち受けていることかと思います。

そこは何とか鼻歌交じりでかわして行きたいものだと思っております。

次回は諸事情で少し先になりますが、11月11日(月)に更新致します。

それでは皆さん、ごきげんよう。